リチウムイオン3直列電池の充電実験

充電式クリーナーから取り出した使い古しの18650リチウムイオン電池を3直列の状態で充電する実験を行った。
以前の記事にまとめた通りリチウムイオン電池は過充電や過放電すると内部ショートを起こして危険なので念のため自作の保護回路を取り付け、充電には安定化電源を利用した。

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回路構成

下はバッテリーと周辺回路の図。バッテリーセルは3直列とし、保護回路が各セルの電圧を監視して過放電や過充電を検出したらバッテリーを外部回路から遮断する。

図

セルバランス回路は省略

セルバランス回路とは電圧の高いセルから電圧の低いセルへと電流を流すことでセル間の電圧バランスを保つ働きをする。

直列接続のバッテリーセル間に電圧バラツキがあると、充放電途中の中途半端なタイミングで保護回路を発動させるセルが出て、他のセルの残容量を使い切れず組電池全体の容量が見かけ上減ってしまう。セルバランス回路によってセル間の電圧を揃えることにより、保護回路の発動するタイミングも揃い、結果バッテリーの容量を最大限活用出来るというわけだ。

しかし今回はセルバランス回路付きの保護回路が手元に無く、セルバランス回路無しで実験することにした。

充電器は安定化電源を利用

リチウムイオン電池を安全に充電するための目安は「充電最大電流は1C相当迄。充電最大電圧は1セルあたり4.2V」という条件。これを満たすためには、以下のような制御が出来れば良い。

  • 充電初期は定電流充電
  • 充電後期は定電圧充電

つまり電圧と電流の上限を適切に設定出来れば良く、安定化電源があればこのような設定は簡単に出来るので、今回は手持ちの安定化電源を使うことにした。

保護回路の取り付け

保護回路基板はバッテリーセルの直列数や充放電電流の容量に応じた様々な物がAliExpressなどで売られており、それらを買って使うのが手っとり早い。が、すぐ実験したいのに運賃の安い普通便だと中国から届くのに早くても2〜3週間はかかるため、買い置きしてあった部品を使って基板から自作することにした。自作保護回路の詳細は下記別記事を参照。

リチウムイオン組電池用の保護回路を自作する
リチウムイオン電池を使う時は保護回路が必須。セルの直列数や電流容量に応じて色々な物がAliExpressに売られており買って使うのが手っとり早いのだが、諸事情により自作することに。せっかくなので、記録がわりに記事に残しておく。保護回路の回路...

今回は18650用ホルダーにリチウムイオン電池を収め、保護回路を配線した。

図

安定化電源の調整

まずは上限電圧の調整。今回は1本あたり4.2V迄フルフル満充電にせず少し控え目の4.1Vとし、3本直列なので4.1V×3=12.3Vで充電電圧の制限をかける。出力端子に何も接続させない状態で安定化電源の電圧調整ツマミを回して12.3Vにセットする。

写真

つぎに、上限電流の調整。出力端子をショートさせた状態で電流調整ツマミを回し、上限電流を700mAにセットした。

写真

いざ充電!

充電電圧と充電電流を記録するために今回はESP32マイコンを使った電流ロガーを使う。組電池(保護回路を接続した3直列リチウムイオン電池)と安定化電源の間に電流ロガーを接続し、安定化電源をOn!

図

充電電圧/電流の時系列グラフ

ロガーが記録した組電池の両端電圧と充電電流の時系列グラフは以下の通り。開始後約90分は設定通り700mAの定電流充電になっているが、その後は定電圧充電に切り替わっている。定電圧充電に切り替わった直後のバッテリーの両端電圧約12.0Vに対し安定化電源に設定した電圧12.3Vと差が出ているのは、電流測定用のシャント抵抗や諸々の配線抵抗等の影響だろう。

図

電池単体の電圧変化を確認

上の時系列グラフでは充電中の3本の合計電圧を測定したが、充電前後と放電後について3本それぞれの単体電圧をマルチメータで測定し表にまとめた。

電池A電池B電池C
充電前3.41V3.47V3.51V
充電中(開始後約60分)3.75V3.78V3.84V
充電完(開始後約180分)4.02V4.07V4.14V
充電後(7日間放置)4.00V4.05V4.11V
放電中3.61V3.63V3.67V
放電終了時3.42V3.47V3.51V

実は電池A〜Cの電圧はもう少し揃っていたのだが、単体電圧がバラついた時にどうなるか知りたかったので、AとBを放電して初期電圧をバラつかせてから実験を行った。

リチウムイオン電池の定格電圧である3.7V付近では電圧差が縮まったように見える時が存在するものの、充放電ともに最初の電圧差をほぼキープしたまま電圧が推移していく結果となった。

もし充電電圧を上限ギリギリの4.2V✖3=12.6Vにして充電した場合、充電完了時に電池A,Bは4.2V未満の一方で電池Cは4.2Vを超えてしまう可能性がありそうだ。構成する電池に電圧バラツキがある場合の組電池充電には注意が必要ということが改めて分かった。

まとめ

リチウムイオン電池3直列で充放電する実験を行った。充電には安定化電源を用いたが、最初は定電流充電され、その後は定電圧充電されるという期待通りの結果となった。

今回はセルバランス回路無しで実験したが、3本の電池の電圧バラツキを考慮した充電終始電圧にしないと電圧の高いセルが上限電圧4.2Vを超えてしまう可能性がある事も分かった。

こういう時にセルバランス回路が入っていれば電圧バラツキを解消してくれるのだろうか?セルバランス回路の要否はちょっと気になるところなので、別途実験してみたいと思っている。

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