リチウムイオン電池のリユースを考える

今どきの充電式デバイスには大抵リチウムイオン電池が使われている。リチウムイオン電池は二次電池としての性能が高く、電子工作マニアとしては、使い古しのモバイル機器からリチウムイオン電池を取り出して活用出来ないかと考えてしまう。

しかし、リチウムイオン電池は発火や破裂などの恐れがあって取り扱いを間違えると非常に危険。再利用の際はリチウムイオン電池の正しい扱い方を知ったうえで必要な対策を講じる事が大切だ。

今回はリチウムイオン電池をリユースする際に注意するべき事をまとめてみる。

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リチウムイオン電池の基礎知識

常に念頭に置きたいのはリチウムイオン電池の危険性だ。まずは基本的な所を押さえたい。

リチウムイオン電池には幾つか種類がある

一口にリチウムイオン電池と言っても使用する材料の違いによって種類が幾つかある。リチウムイオン電池のリユースを考える時に特に気をつけたいのは電池の充放電電圧だ。

モバイル機器でよく使われるのは正極材にコバルト酸リチウムを使ったタイプで、充電の上限電圧は4.2V、放電の下限電圧は3V前後とするのが標準的。

一方、正極材にリン酸鉄を用いたリン酸鉄リチウムイオン電池(LiFePO4)が最近話題(比較的安全性が高いと言われている)になっているが、このタイプは充電の上限電圧が3.6Vと一般的なリチウムイオン電池とは異なるため、専用の充電回路でないと充電不可なので注意。但し、モバイル機器に採用される例は稀であり、リユースという意味では殆ど遭遇しないタイプだろう。

以下では、モバイル機器に採用実績が多いコバルト酸リチウムを正極材に使った物を「リチウムイオン電池」と呼ぶことにする。

リチウムイオン電池発火の衝撃映像

不良リチウムイオン電池が発火する事故が起こって騒ぎになることがある。例えば航空機ボーイング787に搭載したリチウムイオン電池が発火した事件を記憶している人も多いと思うが、これは製造上の欠陥があった不良電池の内部ショートが原因と言われている。

製造上の欠陥が無い電池も、釘刺しなどで意図的に内部ショートを起こすと発火する。固い金属ケースに覆われていないリチウムイオンポリマー電池は特に機械的な歪に弱い。下のリンクに東京消防庁による恐怖の実験動画が公開されているが、電池に釘を刺してもないのに機械で潰すだけで内部ショートし発火している。リチウムイオン電池は電解質に有機溶剤が使われており、一旦火が付くと爆発的に燃える。

リチウムイオン電池のショートは厳禁

リチウムイオン電池は内部抵抗が低くショートさせると大電流が流れて過熱→発火という道を辿りかねないためショートは厳禁。回路の短絡による外部ショートはヒューズなどを付けて対策するにしても、厄介なのは内部ショートであり発生する要因が幾つかある。

  1. 電池の製造不良
  2. 電池外部からの機械歪(特にリチウムイオンポリマー電池)
  3. 電池内部の異常な化学変化(規定外の電圧での充放電)

1.の製造不良は論外として、リチウムイオン電池を利用するうえでは2.3.を起こさないように気をつけることが重要だ。

リチウムイオン電池は過放電/過充電どちらも内部ショートの原因になる

過放電と過充電のいずれでもリチウムイオン電池内部で異常な化学変化が起こり、電池内部で金属が析出して内部ショートの原因となり得る。

  • 過充電: 本来イオンとしてのみ存在する筈の金属リチウムが電池の内部で析出
  • 過放電: 負極に使われている銅が電解質に溶け出した後、金属として析出

直感的には過充電の方が危なそうなイメージがあるが、過放電の場合も内部ショートに繋がって発火に至る可能性があるため注意が必要だ。

リチウムイオン電池の劣化要因

リチウムイオン電池を安全に長持ちさせるためには、以下に挙げるような電池を劣化させる要因を知り、出来るだけ電池にダメージを与えないようにする事が大切だ。

充放電サイクルによる劣化

普通に使っていてもリチウムイオン電池は徐々に劣化する。劣化すると典型的には以下の2つの症状が現れる。

  • 電池の容量が少なくなる
  • 電池の内部抵抗が上昇する

これらは電池内部の電解質の分解や正極材/負極材表面への不純物の付着が原因と言われている。

熱による劣化

リチウムイオン電池は高温状態に弱いので、炎天下の車の中に放置したり等は避けるべき。また、充放電の電流が大きいと電池自体の発熱によって電池が高温になりやすい。特に劣化で内部抵抗が上昇した電池は発熱しやすいため、控えめな電流で充放電しないと電池の劣化を更に早めてしまう。

過放電や過充電による劣化

上に書いた通り、リチウムイオン電池の過充電や過放電は内部ショートという最悪の劣化をを引き起こすので厳禁。機器に組み込まれた状態であれば過充電は勿論のこと過放電も保護回路が一応防止はするが、特に過放電は長期保管の際に自己放電で意図せず起こってしまう場合がある。リチウムイオン電池の長期保管は適度に充電された状態で行うのが電池にも優しい。

更に詳しい資料

少し古い文献だが、電力中央研究所がリチウムイオン電池の劣化について研究した内容が公開されている。

https://criepi.denken.or.jp/hokokusho/pb/reportDownload?reportNoUkCode=T99040&tenpuTypeCode=30&seqNo=1&reportId=5098

ちょっと詳しすぎて電子工作には関係ない感じではあるが、電池の中で複雑な化学反応が起こっていることを垣間見ることが出来る。

古い機器のリチウムイオン電池を再利用する

古い機器のリチウムイオン電池は安全に充放電出来る状態が維持されている限り多少劣化が進んでも用途次第では十分使える可能性がある。例えば内部抵抗が上昇して大電流の取り出しには耐えられなくなったノートPC用や電動工具用のバッテリーも、省電力なマイコンやLEDランプの用途なら未だ使えたりする、という具合。

バッテリーパックは仕様不明の組電池になっていて扱いづらいのと、劣化が進行しすぎた電池を再利用から除外したいので、解体して再利用するのが基本と考えている。とはいえ、解体したバッテリーパックは後述の通りリサイクル対象外となる事には留意したい。

リチウムイオン電池には保護回路が必須

家電用機器のリチウムイオン電池バッテリーパックには必ず保護回路が取り付けられており、上に書いた「過充電」「過放電」「外部短絡」の3事象を避けるよう対策されている。これら3事象は電池を急速に劣化させるだけでなく発火にも繋がるため、バッテリーパックを解体して取り出したリチウムイオン電池にも改めて保護回路を取り付けて安全性に配慮したい。

18650タイプの単セル電池

リチウムイオン電池のバッテリーパックを解体すると、写真のような18650タイプの単セル電池が出てくる場合が多い。

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18650タイプであれば、電池ボックスも売られている。電池ボックスに収めれば手軽に使えるようになるが、保護回路無しの裸の状態である点は留意すべきだろう。

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携帯電話のバッテリーパック

古い携帯のバッテリーパックも端子にリード線をはんだ付けすれば単セル電池として使える。バッテリーパックの中に保護回路が入っている点は少しは安心材料だ。

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リチウムイオンポリマーの単セル電池

こちらは薄型ノートPCのバッテリーパックを解体して取り出したリチウムイオンポリマーの単セル電池。保護回路無しで裸の状態なうえに、変形させると内部ショートするので物理的な取扱にも気をつけたいタイプだ。

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リチウムイオン単セル電池の充電方法

バッテリーパックの充電回路には大抵セルバランスという機能があって、各セルの容量差を吸収する動作をしてくれる。セルバランス回路には大きく分けるとアクティブ方式とパッシブ方式があり、AliExpressなどでも各種のセルバランス回路基板が売られてたりするが、特に劣化した電池ではセル間の容量差が大きく期待通りの動作をしない可能性がある。なのでバッテリーパックの解体で取り出した電池は1つずつ単セルで使うことが基本ではないかと自分は考えている。

以下、単セル電池を充電する方法を幾つか紹介しておく。

直流安定化電源

簡単なのは直流安定化電源を使った充電。出力電圧を4.2Vに設定し、適宜電流リミッタを設定したうえでリチウムイオン電池を繋げば充電出来る。ただ、いちいち電圧や電流を設定するのが面倒だし、設定ミスによる事故の可能性もあるので、あまり実用的とは言えないかも。

中華製充電基板

5V入力(USB端子経由の給電OK)の中華製リチウムイオン電池充電基板がAliExpressで格安販売されている(1枚あたり50円未満)。

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約1Aの充電電流でで単セル電池を充電可能。充電コントローラはTP4056というICで仕様上は抵抗一本の交換で充電電流を変える事も出来そう。過放電と短絡の保護回路(こちらはDW01+FS8205)も付いているので、この基板を取り付けるだけで単セル電池を安全に充放電出来るようになる。

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中華製モバイルバッテリー化グッズ

18650タイプの電池をモバイルバッテリー化しUSB端子経由で充放電が出来る便利グッズがこちらもAliExpressにて格安で売られている。

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USB A端子の5V出力も付いており、スマホの充電もOK。過充電と過放電の保護回路付きで電圧制御の精度も悪くないのでそこそこ安心して使える。

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自作マイコン充電器

主にテスト用途ではあるが、ESP32マイコンを使った自作充電器も使っている。

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関連記事は以下。

リチウムイオン電池の再利用で心がけるべき事

クドいようだが、リチウムイオン電池の再利用にあたっての心得を改めてまとめておく。

安全な条件で充電する

リチウムイオン電池の一般的な充電条件は以下の通り。

  1. 急速充電は1C相当の電流まで
  2. 満充電電圧は4.2V

劣化した電池は内部抵抗の上昇により新品電池よりも熱を持ちやすく1Cでは電流が過大な可能性があり、電池の劣化具合に応じて充電電流も小さくした方が良い。また電池の個別仕様によって満充電の電圧も本来微妙に違う筈なので、安全のためには低めに設定したい所だが、自作充電器でない限り満充電電圧は調節しようが無いのが泣き所だ。

内部ショートを起こした電池は使わない

以下のような症状の場合は内部ショートの可能性があり、危険なので再充電は慎重に行うか諦めた方が良い。

  • 液漏れしている
  • 単セルで電圧が2Vを切っている
  • 明らかに膨らんでいるリチウムイオンポリマー電池
  • 充電した傍から電圧がどんどん下がる電池

上にも書いた通り長い間使わずに放置したデバイスのバッテリーは過放電によって内部ショートを起こしている場合があり、再利用しようとする際は特に注意が必要だ。長期間放置したリチウムイオン電池を恐る恐る再充電した顛末は別記事にまとめてある。

リチウムイオンポリマー電池は変形しないよう保護して使う

リチウムイオンポリマー電池は折り曲げたり変形させると内部ショートを起こすので、ケースに入れるなど外装の保護にも気を使いたい。

リチウムイオン電池のリサイクル

日本には使用済みのリチウムイオン電池から資源をリサイクルする仕組みがあるのだが、バッテリーパックを解体すると引き取ってもらえなくなる。

国内のリチウムイオン電池リサイクル事情

日本国内ではJBRCという団体がリチウムイオン電池のリサイクルを行っている。

再資源化 | 小型充電式電池のリサイクル 一般社団法人JBRC
小型充電式電池のリサイクルを推進するJBRC。&#12...

リチウムイオン電池のリサイクルではコバルトなどのレアメタルが抽出され再利用される。しかし、リチウムが溶けた電解質については主にコストに合わないという理由で回収されず捨てられる事になる。だから、リサイクルに回すよりも使える電池はそのままリユースした方が地球に優しいと個人的には考えている。

解体して取り出したリチウムイオン電池はリサイクル不可

バッテリーパックを解体して取り出したリチウムイオン単セル電池を使える限り再利用した後、いよいよ要らなくなった時にリサイクルボックスに入れれば回収してもらえるか?が気になりJBRCに問い合わせてみた。すると、以下のような回答が。

JBRCの回収としては下記の理由により、分解電池は回収対象外としております。
・分解時のダメージも含めて安全担保が出来ないためです。
 リチウムイオン電池はニッケル水素電池と非比較してエネルギー容量も大きく、
 万が一内部・外部でのショート時に火災等の発生の危険があります。
 安全回路等は電池パックに組み込まれています。
・JBRCが回収の認定を受けているものは会員企業の充電式電池ですが、
 分解すると会員企業を特定できません。

要するに「業界団体でお金を拠出して運営費を賄っているのに、素性が分からない電池まで面倒見れない」という事らしい。ごもっとも。

まとめ

リチウムイオン電池の危険性と再利用を行う際に注意するべき点をまとめてみた。

品質不明の中華製リチウムイオン電池を新品で買って使うよりも、しっかり安全基準を持ったメーカーの製品から取り出した中古電池の方が寧ろ安全じゃないかと個人的には思っている(このへんは色々な意見がありそうだが)。

またリチウムイオン電池のリサイクルではレアメタルの回収しか行っていないため、使える電池は再利用した方が地球に優しいとも思っている。

但し、バッテリーパックを解体してしまうと通常のリサイクルが不可能になってしまう点は考えものだ。おいおい考える必要はあるかと思う。今後もし何か分かったら記事にしていきたい。

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