古くなって長い間放置した某有名メーカー製ノートPCのバッテリパックを解体してリチウムイオンポリマー電池を取り出し、再充電を行う実験を行った。別記事にまとめた通りリチウムイオン電池は非常に危険な電池であり、古いリチウムイオン電池の再充電には危険が伴うため、細心の注意を払って実行した。
バッテリーパックの解体
作業に入る前に、バッテリーパックを解体するとリサイクル出来なくなることに留意する必要がある。
リサイクル出来なくなる覚悟を決め、まずはバッテリーパックの殻割り。中の電池を傷つけると発火する恐れがあり、おっかなびっくりカッターで外装に少しずつ切り込みを入れていった。なんとか外装をどかして6本のリチウムイオンポリマー電池とご対面。
バッテリーの端子は右端の保護回路から伸びるフレキ基板と溶接されているので、フレキ基板をニッパーで切断して単セル電池を取り出した。”16.2Wh 3.7V”の文字列が見えるので、容量は \frac{16.2 \rm{Wh}}{3.7 \rm{V}} = 4.38 \rm{Ah} ということか?
取り出したリチウムイオンポリマー電池のテスト充電
取り出した6本のリポ電池の端子電圧を測定すると少しバラツキがあって2.5V〜3.0Vの範囲だった。酷い劣化が疑われるほど過放電はしていない感じだが以前の記事でまとめた通り、劣化が進んで内部ショートを起こした電池をいきなり大電流で充電すると過熱する可能性があって危険なため、まずは小さな電流から始めて様子を見ながら充電した。
ESP32マイコン充電器で初期充電
小さな電流でチョロチョロ充電して様子を見たいので、充電電流のコントロールが簡単に出来るESP32マイコン充電器で行った。
万が一リポ電池が過熱しても手で持って対処出来るように瓶に入れ、以下の条件で恐る恐る充電を試みた。
- 100mAで約2時間充電後、12〜24時間放置
- 300mAで約2時間充電後、12〜24時間放置
それぞれ電圧を記録した結果は以下の通り。
リポ#1 | リポ#2 | リポ#3 | リポ#4 | リポ#5 | リポ#6 | |
---|---|---|---|---|---|---|
初期状態 | 2.50V | 2.50V | 2.55V | 2.55V | 2.99V | 2.99V |
2時間充電@100mA直後 | 3.45V | 3.45V | 3.41V | 3.41V | 3.44V | 3.46V |
12〜24時間放置 | 3.39V | 3.43V | 3.39V | 3.38V | 3.43V | 3.46V |
2時間充電@300mA直後 | 3.59V | 2.57V | 3.60V | 3.61V | 3.58V | 3.60V |
12〜24時間放置 | 3.55V | 3.57V | 3.58V | 3.59V | 3.56V | 3.58V |
電池が内部ショートしていると充電中に電池が熱を持ったり異常が起こりそうだが、問題無く充電され電圧も上昇してくれた。置いておくだけでどんどん放電して電圧が下がるような症状も現れず、上の表を見る限り#1〜#6のいずれの電池も問題無さそうだ。
リポ電池にリード線をはんだ付け
ひとまず6本のリポ電池は使えそうな感じなのでリード線をはんだ付け。バッテリーから直接出ている端子ははんだが乗らないので、溶接されているフレキケーブルの終端にヤスリをかけて銅をむき出しにしてからリード線をはんだ付けした。
中華製充電コントローラで充電
リード線も付いたことだし、最終的なテストとして中華製リチウムイオン電池充電基板で1000mAhの充電を行ってから、数日寝かせて自己放電を観察した(写真で5V給電に18650モバイルバッテリーを使っている事に深い意味は無い)。1000mAhの計測にはUSB端子接続のIVメーターを使った。
リポ#1 | リポ#2 | リポ#3 | リポ#4 | リポ#5 | リポ#6 | |
---|---|---|---|---|---|---|
初期状態 | 3.55V | 3.57V | 3.58V | 3.59V | 3.56V | 3.58V |
約1000mAh充電直後 | 3.77V | 3.77V | 3.76V | 3.77V | 3.77V | 3.77V |
充電後約24時間 | 3.75V | 3.76V | 3.76V | 3.76V | 3.76V | 3.76V |
充電後約3日 | 3.75V | 3.76V | 3.76V | 3.76V | 3.76V | 3.76V |
充電後約10日 | 3.73V | 3.75V | 3.75V | 3.76V | 3.76V | 3.76V |
充電後はバッテリーに表記された定格電圧の3.7Vを無事超えてくれた。10日間放置して経過を見たところ#1のセルは若干怪しい(実際心なしか本体がガスで膨らんでる気がする…)が、他は殆ど電圧変化が無いので内部ショートも無く特に問題なく使えそうな感触だ。
(追記)残量0の電池発生!
これらのリポ電池を数カ月放置した後、#1セルの電圧が0.5Vと極度の過放電になっている事を発見。パンパンではないにせよ本体が明らかにガスで膨らんでおり、このセル内部では過放電が原因で負極の銅が溶出している可能性が高い。
この#1セルはもう再充電はしない方が良いだろう。一方で他の#2〜#6のセルの電圧は全く変わっておらず、問題なく使えそうだ。
まとめ
使用せずに放置していたノートPCのバッテリーパックを解体(リサイクル対象外になるので注意!)し、おそるおそる充電を試みた。小さな電流から徐々に充電電流を増やす方法で休み休みの充電を行ったのだが、1本のセルを除けば自己放電も殆ど無く問題なく使えそうな感じ。電池の劣化の度合いが不明ではあるが、定格で4Ah以上の容量があり膨らみも特に無いのでそこそこ電池容量はありそう。
続報として、このリポ電池を3直列にして組電池として再利用する試みも行い、以下の記事にまとめた。
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