デサルフェータで鉛バッテリーの復活に挑戦する

手持ちの鉛バッテリーを完全放電させてしまい、解決方法をネットで探っていた所「デサルフェータ」と呼ばれる物を知った。デサルフェータとは劣化した鉛バッテリーを復活させるための回路で、別記事でLTspiceによるシミュレーションを行っている。

今回はデサルフェータの実回路を組んで劣化した鉛バッテリーに装着し、完全放電させた鉛バッテリーの復活に成功したので顛末をまとめる。

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鉛バッテリーの劣化と復活のメカニズム

鉛バッテリーの「サルフェーション」って何?

鉛バッテリーのサルフェーションとはバッテリーセル内部の電極表面に不導体である硫酸鉛が付着することによって起こる。硫酸鉛は鉛バッテリー放電時の化学反応で生成される物質で、すぐにバッテリーを充電すれば化学反応で鉛と硫酸に戻るので問題を起こさないが、充電せずに放置すると結晶化して電極に付着し不導体の層を作ってサルフェーションの状態になる。特に安価な開放型バッテリーはサルフェーションを起こしやすく、常に満充電状態にしておくのが長持ちさせる使い方だ。

サルフェーションによるバッテリー劣化の症状

自分が劣化させてしまった鉛バッテリーは自動車用だが車には取り付けておらず、以前制作した発電機能付きエアロバイクもどきに使っている物。充電しても一瞬で14V以上に上昇し、充電をやめたそばから電圧がどんどん低下して完全放電状態に戻るといった極端に容量が減ったような状態に。常に充電器を取り付けて満充電をキープしていたわけでもなく、自転車を漕いで充電させた後にスマホの充電で電流を取り出したり、といった使い方があまり良くなかったのかも知れない。

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デサルフェータによる鉛バッテリー復活のメカニズム

サルフェーションを起こした電極は化学反応を起こすのに有効な表面積が小さくなっており、バッテリー内部での化学反応そのものが阻害されて元のように充放電が出来無くなっている。デサルフェータはパルス電流を印加することで電極にショックを与え絶縁体となったサルフェーションを水溶性の硫酸鉛へと変えてくれるようだが、詳しいメカニズムを解説した資料を見つけることが出来なかったので、あくまで推測だ。

デサルフェータの回路

回路は基本的に別記事でLTspiceシミュレーションを行った物と同一だが、シミュレーションのためのダミー鉛バッテリー回路など余計な物を取り除いた本番用の回路図を以下に掲載しておく。回路図中MOSFETにLTspiceデフォルトでモデルが用意されている2N7002を使っているが、実回路ではほぼ特性が同じ2N7000を使った。ダイオードも本当はショットキーバリアダイオードを使った方が良いのだろうが、扱う電圧も高めだし、普通のスイッチングダイオード1N4148をチョイス。MOSFETやダイオードは品種に特にこだわる必要は無く、小信号用の汎用品で問題ないだろう。

  • 通常バージョン
    ブレボ
  • 電源外付けバージョン(極端に劣化した鉛バッテリー用)
    ブレボ

Step1 – 電源外付けバージョンのデサルフェータでそこそこ復活させる

今回復活させる対象の鉛バッテリーは自転車発電で使っている物なので日課の運動の時しか充電されず、充電は多くても一日一回。そのうえ劣化が進み容量が極端に少なくなっているため、通常バージョンのデサルフェータだと回路自体が消費する電力でバッテリーが完全放電されてしまい、バッテリーの復活どころではなかった。

過去記事に書いた通り、鉛バッテリーは開放型ということもあって本体は屋外に置いて配線を屋内に引き込んでいる。

屋内の配線に電源外付けバージョンのデサルフェータを取り付けて常時パルス電流で鉛バッテリーを刺激しつつ、自転車発電を使いながら2ヶ月位様子を見ていた。ある時にバッテリーの端子電圧が15Vを超えているのを見つけ過充電が疑われたので電源外付けバージョンを取り外し、通常バージョンのデサルフェータに移行した。

Step2 – 通常バージョンのデサルフェータに付け替え

通常バージョンなら鉛バッテリーから直接電源を取れば良いので、バッテリーのすぐそばにデサルフェータを置くようにした。

ブレボ

Step1の時のようにデサルフェータ回路と鉛バッテリーの間を配線で引き回してしまうとパルスがバッテリーに届くまでに配線のインダクタンスで波形が鈍ってピーク電圧が下がってしまうため、今回のようにバッテリー端子近くに回路を接続した方が効果upが期待出来る。

またデサルフェータはパルスが配線を通過する際に強烈なノイズを放射するため、屋内へ向かう配線にパルスが伝わりにくくするために気休め程度でフェライトコアを取り付けてみたりしている。ただ効果は薄いようで愛用オシロのADALM2000がノイズで誤作動して使い物にならず、バッテリーの端子電圧は昔使っていた1chのUSBオシロを引っ張り出して測定した。

ブレボ

このオシロは最大測定電圧が20Vなのでパルスのピークが振り切れて見えなくなっている。拡大すると、ピーク時の電圧は30V近く出ていそうな感じ。

ブレボ

LTspiceのシミュレーションでプロットした電圧波形と比較して気づくのは、パルス幅が非常に狭いこと。実測していないので推測だが、高電圧が掛かった瞬間はバッテリーの内部抵抗が大きいところ、次の瞬間内部抵抗が急激に下がって瞬間的に大電流が流れると共に一気に電圧も下がるのだと思われる。この一瞬流れる大電流がサルフェーションを破壊するのではなかろうか。

まとめ

デサルフェータの回路をブレッドボード上に組んで劣化した鉛バッテリーに取り付け復活を試みた。まずStep1として外部電源供給バージョンのデサルフェータで劣化しすぎの状態から少し復活させた後、Step2でバッテリー自身で電源供給する通常バージョンのデサルフェータに移行する順序で実行。当初は廃棄しか無いと諦めかけていたバッテリーが自転車発電システムで使えるレベルまでは復活出来た。

詳しいメカニズムは良く分からないものの、バッテリーを廃棄せずに済んだのは大きい。他の用途で使っているバッテリーでも有効かどうかはチャンスがあったら試してみたい。

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