TL431の発振防止を考える

シャントレギュレータTL431は基準電圧源を始めとして色々使えて便利な3端子ICだが、このICは使い方を間違えると発振して期待通りの動作をしない事がある。今回は、LTspiceでTL431の発振をシミュレーションするとともに、過去記事で扱ったTL431応用回路の発振についても検証する。

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TL431の発振をLTspiceでシミュレーションする方法

詳しいメカニズムは良く理解出来ていないが、接続しているコンデンサの容量が不適切だとTL431は発振してしまう。その様子をLTspiceで確認したくても、自分が好んで使っているLTwikiに置いてあるTL431のSPICEモデルには近似が入っていて発振まではシミュレーションしてくれない。一方でねがてぃぶろぐさんの記事で公開されている回路はTL431の等価回路そのものがLTspice上に組まれており発振も含めてシミュレーション可能とのことで、使わせて頂くことにした。

以下がその回路図。TIのTL431データシート記載の等価回路をLTspice上に組んだとのこと。REF端子とCATHODE端子が接続され、電源VCCとCATHODEの間は1kΩが接続されている。

Tl431等価回路

回路図のC3が問題のコンデンサ。この容量を0.001uF, 0.1uF, 10uFの3パターンでシミュレーションしてみる。

Tl431発振

拡大してみると…0.1uF(青色)で見事に発振している!

Tl431発振の拡大

TL431が発振する条件をデータシートで確認する

下の画像はTIのTL431データシートからの引用で、右側(図17)のテスト回路で調べた安定条件が左側(図16)のグラフに示されている。安定条件グラフの曲線の内側に入るとTL431は発振してしまうので、グラフ横軸に示された負荷コンデンサ容量と縦軸に示されたCATHODE電流の組合せが曲線の外側になるように気を配る必要があるということだ。上記LTspiceで発振を確認した回路に関しては、REF端子とCATHODE端子が接続されているのでグラフのAの曲線を見れば良く、負荷容量0.1uFは電流の条件に関わらず必ず発振するような悪条件だったと分かる。

Tl431データシート記載の安定条件グラフ

過去記事の検証: 負電圧生成回路

過去記事「TL431で負電圧のレギュレータを作る」で、以下のような回路を考えた。

負電圧レギュレータNG回路

この回路ではC2を発振防止のつもりで入れたのだが…逆に発振の原因になっていないか検証してみよう。上の回路からTL431を外して、冒頭で発振を確認したTL431等価回路相当の物に置き換える。

負電圧レギュレータ発振チェック回路

RLを変えながらシミュレーションを実行すると…見事に発振orz。特にRL=100の時(緑の線)の発振が酷く見える(が、RLに並列に入っているC5の効果で振幅が小さくなって見えるだけで他も発振している)。そして、ANODE-REF間のコンデンサ(上の回路図のC4)を0.1uFから10uFに変更したり、取り外してしまえば発振しなくなった。見事にダメダメな回路を公開してしまったことになる。記事を訂正する必要がありますな…。

負電圧レギュレータ回路が発振

まとめ

TL431の発振をLTspiceのシミュレーションで確認し、過去にTL431を使って作った回路の検証も行った。TL431が発振する条件をデータシートで確認する方法も分かったので、今後は気をつけて使っていきたいと思う。

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